変わるドイツ事情
「徹底的なこだわり」を売り物にしていたドイツのモノ作りが、変わりはじめたようです。先月閣議決定され、現在審議中の法案では、手工業マイスター94職種のうち65職種、衛生管理などの安全維持にかかわる分野を除くほぼすべての職種が廃止されることになります。ドイツの「こだわりのモノ作り」を支えてきた、中世以来の伝統的マイスター制度がなくなろうとしているのです。
その背景には、激しい国際競争の中で、コストのかかる「職人芸」を見直さざるをえない大手企業のグローバル戦略があるようです。「ドイツ製は高価だが品質が最高」として、ドイツ人だけではなく世界中が受け入れる時代は過去のものになってしまった、ということなのでしょう。
そしてこのことは、戦後半世紀にわたって強固な福祉社会を実現し、公平、正義、環境等々の人間性にこだわる豊かな社会をめざし続けたドイツ社会の変化とも連動しているように思えます。GeOの靴が売れなくなったのも、また、ショットさんが選んで私たちが使っているドイツ製の靴の品質が年々低下してきているのも、さらに、数年前にはほとんど見られなかった機能性に問題のある安価なスニーカーがドイツの靴屋に溢れている光景、……等々も、すべてひと繋がりのことなのかもしれません。
整形外科靴マイスターのような、医療と直結した分野は当然今回の対象外でしょうが、このドイツ社会の大きな変化は、私たちが依拠しているドイツ整形外科靴技術にも徐々に影響を与えてくるものと思われます。
vol.17(2003年6月10日)より